2013年11月21日

天の浮橋(7)

マイケル・ジョーダンが、半年間のシーズン中に十回程度ゾーンに入る経験をしているとご紹介しましたが、これは時々ではなく、しばしばという程のかなりの頻度だったそうです。
武道では、これが8割とか9割という高い頻度であっても1割、2割の失敗が許されないので、常にゾーンに入ることが出来なければならないと思います。他の武人がどうであったかは分かりませんが、開祖の演武では、常にその状態であった訳ですから、何か脳波をα波にする仕掛けがあったはずです。私は、これが天神楽や早朝の祝詞奏上ではなかったかと思います。気の鍛錬によって、念(イメージ)の力がついてくると、比較的簡単にα波(没入状態、統一状態)に移行できるようです。
今年8月にモスクワで開催された世界陸上で、棒高跳びの選手などが、棒を持ったまま何か言葉を唱えていたのも、明らかに精神を統一させるための仕掛けだったと思います。

2013年5月31日にブログに書いたように、辻秀一医師が『ゾーンに入る技術』で紹介されている方法が「心の鍛錬」に当たると思います。ここには心をそのように統一する仕掛けが書かれています。

心の働きは知・情・意に分けられますが、脳波に深い関わりがあるのは情(感情)で、「心の基本は感情です。『つらい』『苦しい』あるいは『楽しい』『幸福だ』−。私たちは毎日そういう心の動きにそって暮らしています」と言われるとおりです。ただ、私たちの認識としては、情を司っている心は腹にあって、「腹が立つ」「腹の底から笑う」などという言葉になっていると思います。英語の場合の情を表す言葉は“heart”なので、英語圏の人が“heart”と言う時には胸を考えているのではないかと思いますが、この心(感情)をコントロールするときには、腹(臍又は臍下丹田)を意識することになると思います。

『ゾーンに入る技術』の副題は『「驚異の集中力」が最高の能力を引き出す!』です。
「ゾーン」とは、究極の集中状態になり、スポーツや仕事などで最高のパフォーマンスを発揮出来る状況で、さらには、能力以上の力を出せる状況のことです。人間の気が散るという習性を改善し、常に集中状態を作り出すために、脳の認知機能(敵から身を守るために外の環境に敏感になる能力で、周囲のことが気になってしまう習性)とライフスキル機能のバランスを整える方法が書かれています。ライフスキルとは、心を「揺らがず」「とらわれず」のフロー状態に導く機能のことで、このフロー状態は、別の表現をすれば、本気状態とか無我夢中の状態ということで、理由や条件などに頼ることのない恒常的な安定したエネルギーの自家発電状態(心理学では内発的動機の状態)です。フロー状態が進めば、ゾーンに入り、野球でいえば、投手の球が止まって見えるとか、小さい野球ボールがバレーボールほどの大きさに見えるなどの現象が起こります。

集中状態になるためには「何をするのか」が明確で、かつ、それが人からやらされている状態ではなく、自発的な楽しさに満ちあふれた挑戦に満ちた精神状態で行うことが必要とされていて、成る程と納得出来ます。試合中にミスした選手にコーチが「絶対にミスするなよ!」と注意を与えると、それが「とらわれ」として残り、次のプレイでもミスをしてしまうというのは、ノンフロー状態になってしまうからだそうです。褒めて育てるということは、この意味でも大切だと思います。

将棋の羽生名人や野球のイチロー選手が、集中状態を常に作り出している「集中脳」の持ち主として紹介されていて、名人やトップアスリートのような「集中脳」を磨くための3原則が示されています。その第1は、ライフスキル脳の仕組みやライフスキルとはどんなものか、フローとはどんな状態なのかとか、なぜ人はノンフローになるのか、などの知識を持つこと、次に、その知識として得た脳の使い方を実践して、フロー状態になり、集中を体感すること、最後に、その体感、即ちフローの感覚を言葉にして、人と分かち合うことだそうです。この3番目の原則は、体感したことを自分の言葉で表現出来ることだと思いますが、私たちもフロー状態を「呼吸力」や「察気」に置き換えてみると、それ(又はその概念)を言葉で伝えられるようにならない限り、その本質に至っていないことが分かると思います。

認知脳が働いている中で、ライフスキル脳が磨かれ自由自在に使える人、即ちいつでもどこでも集中出来る人をバイブレイン(Bibrain、2つの脳)な人と定義していて、「何をするのか」が明確で、それを限りなくフロー状態で行うことが出来る人で、そうすると集中状態になるそうです。そのために、自分の感情(気分、気持ち)に気づき、楽しい、安心、ゆったり、ワクワクなどのフロー状態をもたらす感情と、イライラ、残念、がっかり、やばいなどのノンフロー状態をもたらすものとを区別して、自己評価することがライフスキルを磨くことになるのだそうです。言いわけ(正当化)すると、自分の心の状態を自分ではなく、環境や経験や他人に任せることになるので、「自分の心は自分で決める、自分の機嫌は自分で取る」と決めることが重要で、これがライフスキル脳の原点になるとのことです。

脳は心なので、心(感情)の使い方によって脳波が変わり、集中状態(フロー状態)が作り出せるということです。
開祖は、「鎮魂というのは、遊離の魂を自己の丹田(たには、王仁三郎聖師は「又言霊学の呼吸より調ベますれば、即ち丑寅の中心より天地人の呼吸を発くので、日本国の天地人は皆丑寅に位置を占めて居り、其真の中心は丹波《たには》の国で、丹波《たには》の亦中心が綾部でありますから」と『神霊界』で述べており、中心の意)に集めることである。遊魂を集めることです。遊魂とは想い(魂)が邪霊(業想念)にとらわれ、魅かれて正守護神から離れて遊びにいっている状態で、これを自己の丹田に収めることを鎮魂というのです」(『武産合気』p.64)と言われています。
「この祈り、みそぎによって、鎮魂帰神も成り立つのである」(『武産合気』p.64)とのことで、感謝の祈りや六根を清浄にする禊(水垢離とは限りません)によって集中状態に入られたそうです。
「又しても行き詰まるたびに思ふかな 厳(いず、五つ、五神)と瑞(みず、三つ、三神)との有難き道」(感謝)
「己が身にひそめる敵をエイと斬り ヤアと物皆イエイと導け」(みそぎ)

開祖は、合気道で「何をするのか」という目的が明確であったようです。開祖の「地上天国」はワクワクするような感情を伴ったものであったことでしょう。
「色身(色心? 色身は肉体という意、色心なら肉体的側面と精神的側面で色心不二という語がある)とか八識とかいう言葉があるが、そのようなタワ言もいらない。只魂の緒の糸筋を磨けばよい。結局今まで世界は魄の世界であった。合気は魄を排するのではなく土台にして、魂の世界に振り替えるのである。そして地上天国建設をすることであり、宇宙建国の目的を達成することである」(『武産合気』p.49)
posted by 八千代合気会 at 18:19| 日記